歯から考えるルーツ2

縄文人の歯

 縄文時代の始まりといわれる1万3千年前は、温暖化が進み陸とつながっていた日本列島はあちこちで大陸と分断され,文字通り島国の形態になってきてました。それまで居住していた人たちが狭い列島の中に閉じ込められ,身体的特徴も,文化的特徴も独自のものとなっていきました。

 さて、縄文人の身体的特徴は、背が小さくて、頭が大きく、狩猟生活で得た硬い木の実や獣肉を食べていたので顎の筋肉は発達していました。さぞや歯も大きかったろうと思うかもしれませんが、縄文人の歯は、弥生人や現代のわれわれの歯に比べて小さかったのです。さらに「歯から考えるルーツ1」でもお話しした「上の前歯の裏側」はあまりくぼんでいません、東南アジアの人々と同じ仲間ということになります。このことはアイヌ人にもあてはまります。

 また、縄文人の前歯は、切端咬合と言って上と下の前歯の先端がぶつかってしまっている状態をしていました。現代人の正常と言われるかみ合わせは、上の歯が下の歯に少しかぶさるようになっています。

弥生人の歯

 弥生時代っていつ頃って、学校で習いましたか?昔は、始まりは紀元前300年,終わりは紀元後300年といわれていましたが、いろいろな遺跡の発見により、弥生時代の始まりは紀元前1000年頃ということになっているようです。こんなこともあるので、うかつに子供さんやお孫さんの勉強には口を出さないほうが無難かも・・・

 さて、弥生時代の主人公である渡来民は,北アジアで北方適応を経た身体の大きな人々でした。引退した横綱を想像しちゃいますね。そして、弥生人の歯は、大きくて複雑な形をしていました。現代のわれわれと同じなのです。前歯のかみ合わせは、上下の切歯が切縁でぶつかることなく,現代人のように 上の歯が下の歯の前に出て,下の歯を覆うような形(被蓋関係) になったのが弥生人の特徴です。

日本人の二重構造説

  弥生以後現代に至る歴史時代の日本人もみな上の前歯の裏が強くくぼんでいる特徴を持っています。ということは,日本人の歴史の中でこの歯の形は弥生人によって初めてもたらされたということになります。弥生人がいわゆる大陸からの渡来民であり,彼らが縄文人と混血してその後の日本人集団の大きな部分を形成したといういわゆる日本人の二重構造説は,歯の形質という形態学的観点からも支持されたようです。