「枕を高くして寝る」は危険

「枕を高くして寝る」とは

その昔、日本にも中国にも戦国時代という時代があって、戦いが多く起こっていました。
※ 日本の戦国時代は15世紀~16世紀頃、中国の戦国時代は紀元前5世紀~3世紀頃。
当時は敵襲があった際に敵が押し寄せてくる音にいち早く気付き対応できるように、枕をせずに床に耳をつけて寝たり、武具を枕代わりにして寝たりすることもあったそうです。
そんな状態では、安心してぐっすり眠るなんてなかなかできなかったでしょうね。

さて、中国の戦国時代には、いくつもの国が相争っていました。
そんな中、張儀(ちょうぎ)という遊説家(ゆうぜいか)が、魏(ぎ)の王に秦(しん)と協力するよう説得を試みます。
※ 遊説家とは、各地を周り、自分の思想や政策を諸侯に提案した人々のこと。
「秦と魏が組めば、周りの楚や韓(かん)の国々はあえて魏に攻め込まないだろう。楚や韓に攻められる心配がなくなれば、王は安心して枕を高くして眠れることでしょう。」
そう張儀は魏王に説いたのでした。

このエピソードにもあるように、「枕を高くして寝る」とは、「心配事がなく、安心して眠ること」を意味しています。

殿様枕症候群

ところが、高い枕で寝ると脳卒中になりやすいことが発表されました。
脳卒中の原因の一つ、特発性椎骨(ついこつ)動脈解離は、高い枕で寝る人ほど発症率が高いことが、国立循環器病研究センターの研究チームの分析で明らかになりました。

特発性椎骨動脈解離

特発性椎骨動脈解離は首の後ろの血管が裂け、脳卒中を起こす病気です。頭痛などをきっかけに発症に気づくことがあります。脳卒中全体の2%程度ですが、働き盛りの世代を含む15~45歳の脳卒中患者の1割程度を占めて、うち2割近くが亡くなったり後遺症が残ったりしますが、根本治療がありません。

高い枕と特発性椎骨動脈解離

国立循環器病研究センターの調査チームは、特発性椎骨動脈解離と診断された53人(45~56歳)と、同じ時期に脳梗塞(こうそく)や脳出血で入院し性別や年齢などをそろえた53人を比較対象とし、発症時に使っていた枕の高さを調べました。
その結果、枕が高いほど特発性椎骨動脈解離を発症しやすいことがわかりました。
特に15センチ以上を使っていた人の9割が特発性椎骨動脈解離の患者であったことも分かっています。
枕が高いと首の屈曲(あごが胸につく方向に曲がっている度合い)が大きくなるほか、寝返りなどで首が回るときに血管が傷つくことが考えられるようです。
また、その調査で、枕が硬いと特発性椎骨動脈解離がおこりやすく、やわらかい枕だと緩和される傾向があることもわかっています。