初期のむし歯は削らなくても治るかも

再石灰化って?

 私たちの口内では、歯を溶かす「脱灰」と、修復を行う「再石灰化」が繰り返されています。
脱灰とは、むし歯菌が作り出した酸によって、歯の表面のエナメル質からカルシウムやリン酸が溶け出てしまうことです。再石灰化とは、脱灰によって溶け出したカルシウムやリン酸が唾液によって再び歯に取り込まれ、歯が元に戻ることです。脱灰と再石灰化が同じ程度で繰り返されている間は、健康な歯が保たれます。

エナメル質はCaの柱の束で出来ている

エナメル質はハイドロキシアパタイトというカルシウムの一種からできています。
滑らかに感じるエナメル質の表面も、電子顕微鏡で見ると実はつま楊枝の束のように無数の「エナメル小柱」からできています。

歯の表面は意外と丈夫

 歯の表層は、再石灰化を促すイオン(カルシウムイオン、リン酸イオン)がたくさん含まれた唾液で常に覆われているので、石灰化度は良好です。しかし、表層下に進むほど弱くなります。酸は歯に触れるとエナメル質小柱を伝って表層下に侵入していきます。表層は脱灰から免れても 再石灰化を促すイオンが少ない表層下では脱灰が進行していきます。写真の矢印の部分が初期むし歯です。表層は黒くないのがお分かりになるでしょうか。したがって脱灰(う蝕)は歯の表層から始まるのではなく、表層下から進行し、やがて表層のエナメル質に達して穴が開いてむし歯の治療が必要となります。

初期のむし歯なら削らなくても治る

  図のa はエナメル質の初期脱灰(White spot)です。これは表層下で脱灰が進行している状態です。この段階ではう蝕は可逆的で,もとの健全なエナメル質に戻すことが可能です。

 図のb、cは、どの程度脱灰が進行しているかを特殊な光をあてたものです。赤~青になっている部分が脱灰されている部分です。(b)から3か月就寝前フッ素洗口を繰り返すことにより、脱灰部が再石灰化されたのが(c)です。

 これは、究極の予防,あるいはう蝕処置でしょう。